「アートブック」全局解説! 2/2
ここから囲碁するアートブック
全局解説の続きです。
前半はこちら。
「ソフトクリーム」
甘いものが欲しい、と思ったので作りはじめたもの。
やはり絵を描くからには良い絵を描きたいのは当然で、いかに囲碁の筋が優れていても、デザインがアレだったら、ちょっとなと思う。
そんな気持ちでクリームを巻き巻きしている時間は、まるでソフトクリーム屋さんになったようだった。
一番の売りは「クリームが垂れる」という絵の動きだ。
この絵で囲碁を打つとき、白石は全てクリームである。
横から垂らすようにして、陣地をのばしていくのはもちろんのこと、
よく見ると、真ん中で両アタリを狙える作りになっている。
もし実現すれば、黒のコーンの上からクリームが垂れてくる。
この両アタリで絵を動かす技は、ナナメに描いた故に実現したものだった。
碁盤をナナメにしちゃいかん、ということはない。これからナナメでやる囲碁が絶対流行ると思う。
また、あてみみさんとコラボできたのもこの作品で、非常に思い入れがあります。
「生ビール」
一番好きなものを描いた作品。
ビールの泡のふわっとした感じ、それが垂れてくる感じを表現できたと思う。
白番というのは、実際の囲碁でも「ふわっ」とした感じをイメージする。相手の仕掛けをかわすイメージが、一般的にある。逆に黒番はどんどん仕掛けるからゴツゴツしている感じ。
もちろん「膨張色」ということもあり、泡の白色にピッタリイメージが合った。
白は泡を垂らすのが、黒地攻略のヨセの筋に導く。「サルスベリ」などは、泡のこぼれる様そのものだ。
「ゴリラ」
ソフトやビールの、白石が柔らかい感じの作品とは対照的に、こちらは黒番のイメージのごつい感じを全面に押し出した。
体の黒石は左右非対称、実際にいそうな生命感のあるゴリラを描きたかった。
でも顔は白石で、なんか優しそう。
「天才」
自分は天才ではないと思うけれど、もし天才だと思ってくれる方がいたなら、有り難いのと同時に、それは囲碁にとってとても良いことだと思う。
囲碁が強いだけが天才ではない、とその人が思ったからだ。囲碁の中身の天才だけでなく、囲碁を教える天才、囲碁を広める天才、なんでもいいけれど、いろんな天才が認められてこそ、囲碁という文化の豊穣となるのだと思う。
作品のほうは、左右のヨセを綺麗に打てれば黒がぴったり半目勝ちになる。ガチ勢のかたは、ぜひご挑戦を。最後の二手くらいがシビアなところです。
「CUBE」
囲碁は得てして「古めかしい」印象がつきもの。この作品は、メカニックで3Dでデジタルな感じを描いてみたかった。
ヨセのポイントは、真ん中の真四角の空間。
ぜひ実際に対局して、独特の浮遊感を味わってほしい。
「山田さん」
ここから19路作品。
そして、本書で最強の伏兵。「正直山田ナメてました」との報告多数。
一見ネタ作品にしか見えないが、底知れぬ奥深さ、考え出したら脳みそが搾り取られること必至。左右を何往復、見ればよいのやら。
左右が同じになると、黒が半目勝ってしまうので・・・
ちなみに山田は9路.13路バージョンもあり、どちらも激アツ展開になる。会ったらお見せします。
「ワイン」
僕が一番好きな作品のひとつ。出来た時は達成感で満たされた。ついに、バーに自然に溶け込む囲碁ができた。
筋はソフトクリームと同じ、両アタリで溢れる作り。ワインを傾けて描いたら、躍動感が生まれた。
ヨセというより、唯々「囲碁」なので、あとは好きなように打つのが吉。
「答え」というのを気にしすぎると、囲碁アートの楽しみがちょっと減ると思っている。
僕の作品は、詰め碁やシチョウとは違い、「問題」という形式では作っていない。
確かに、最善手順を楽しめるものも多いけれど、この品などは一手目以外は全然、そうではない。
見ての通りだだっぴろいので、終局までの答えは決められず、「だいたい互角、とても細かい勝負」としか言い様のないところ。
しかし、それでいいのである。なぜなら、僕の作品は「囲碁」そのものだからだ。
大切なのは多分、「ここから囲碁をしてみたい」と思っていただけるような作品を作ることなんだと思う。
普段の囲碁とは違う世界を、気楽に楽しんでいただきたい。
「くだものダンス」
道策や秀策が碁盤を繋げて打ったら・・・という話題は江戸時代からあるけれど、当然囲碁アートでもやりたいテーマである。
13路盤を二つ繋げた作品。
個展をした時は、これの左右反転バージョンを作って、くるくるさせて遊んだ。
みなさんもぜひお試しください笑
「消火器さん」
19路を二つつなげた、いわゆる大作。
2016年になるまで、まさか自分が絵を作るとは、夢にも思わなかった。
その更に2年ほど前には、囲碁の計算がなんか突然面白くなり没頭した。(プロ目指してる時には興味なかったのに・・笑)。
こちらも、まさか自分が計算なんて、と意外に思っている。
陣地を計算して絵を描くアート。今にして思えば、人生が自分の思い通りに行ったことなんて全然ない。
まるで天から突然降ってきたような、そんな代物に感じる。
いったん作り始めたら、いろんな絵柄、絵の手筋的なものがドバドバ湧いていて、その勢いを全てぶつけたのがこの作品。僕のいちばん好きな野良猫を描いた。
絶対に決まった場所にいるタイプの子で、一人暮らしの帰り道、消火器さんのおかげで全然さみしくなかった。感謝しかございません。
個展をするときには、これからも絶対持って行く作品。
・・・・長々と書いてみました。
思い入れのあるものばかりの、初めての本。
一度でも見ていただけたら嬉しいです!
ありがとうございました。
全局解説の続きです。
前半はこちら。
「ソフトクリーム」
甘いものが欲しい、と思ったので作りはじめたもの。
やはり絵を描くからには良い絵を描きたいのは当然で、いかに囲碁の筋が優れていても、デザインがアレだったら、ちょっとなと思う。
そんな気持ちでクリームを巻き巻きしている時間は、まるでソフトクリーム屋さんになったようだった。
一番の売りは「クリームが垂れる」という絵の動きだ。
この絵で囲碁を打つとき、白石は全てクリームである。
横から垂らすようにして、陣地をのばしていくのはもちろんのこと、
よく見ると、真ん中で両アタリを狙える作りになっている。
もし実現すれば、黒のコーンの上からクリームが垂れてくる。
この両アタリで絵を動かす技は、ナナメに描いた故に実現したものだった。
碁盤をナナメにしちゃいかん、ということはない。これからナナメでやる囲碁が絶対流行ると思う。
また、あてみみさんとコラボできたのもこの作品で、非常に思い入れがあります。
「生ビール」
一番好きなものを描いた作品。
ビールの泡のふわっとした感じ、それが垂れてくる感じを表現できたと思う。
白番というのは、実際の囲碁でも「ふわっ」とした感じをイメージする。相手の仕掛けをかわすイメージが、一般的にある。逆に黒番はどんどん仕掛けるからゴツゴツしている感じ。
もちろん「膨張色」ということもあり、泡の白色にピッタリイメージが合った。
白は泡を垂らすのが、黒地攻略のヨセの筋に導く。「サルスベリ」などは、泡のこぼれる様そのものだ。
「ゴリラ」
ソフトやビールの、白石が柔らかい感じの作品とは対照的に、こちらは黒番のイメージのごつい感じを全面に押し出した。
体の黒石は左右非対称、実際にいそうな生命感のあるゴリラを描きたかった。
でも顔は白石で、なんか優しそう。
「天才」
自分は天才ではないと思うけれど、もし天才だと思ってくれる方がいたなら、有り難いのと同時に、それは囲碁にとってとても良いことだと思う。
囲碁が強いだけが天才ではない、とその人が思ったからだ。囲碁の中身の天才だけでなく、囲碁を教える天才、囲碁を広める天才、なんでもいいけれど、いろんな天才が認められてこそ、囲碁という文化の豊穣となるのだと思う。
作品のほうは、左右のヨセを綺麗に打てれば黒がぴったり半目勝ちになる。ガチ勢のかたは、ぜひご挑戦を。最後の二手くらいがシビアなところです。
「CUBE」
囲碁は得てして「古めかしい」印象がつきもの。この作品は、メカニックで3Dでデジタルな感じを描いてみたかった。
ヨセのポイントは、真ん中の真四角の空間。
ぜひ実際に対局して、独特の浮遊感を味わってほしい。
「山田さん」
ここから19路作品。
そして、本書で最強の伏兵。「正直山田ナメてました」との報告多数。
一見ネタ作品にしか見えないが、底知れぬ奥深さ、考え出したら脳みそが搾り取られること必至。左右を何往復、見ればよいのやら。
左右が同じになると、黒が半目勝ってしまうので・・・
ちなみに山田は9路.13路バージョンもあり、どちらも激アツ展開になる。会ったらお見せします。
「ワイン」
僕が一番好きな作品のひとつ。出来た時は達成感で満たされた。ついに、バーに自然に溶け込む囲碁ができた。
筋はソフトクリームと同じ、両アタリで溢れる作り。ワインを傾けて描いたら、躍動感が生まれた。
ヨセというより、唯々「囲碁」なので、あとは好きなように打つのが吉。
「答え」というのを気にしすぎると、囲碁アートの楽しみがちょっと減ると思っている。
僕の作品は、詰め碁やシチョウとは違い、「問題」という形式では作っていない。
確かに、最善手順を楽しめるものも多いけれど、この品などは一手目以外は全然、そうではない。
見ての通りだだっぴろいので、終局までの答えは決められず、「だいたい互角、とても細かい勝負」としか言い様のないところ。
しかし、それでいいのである。なぜなら、僕の作品は「囲碁」そのものだからだ。
大切なのは多分、「ここから囲碁をしてみたい」と思っていただけるような作品を作ることなんだと思う。
普段の囲碁とは違う世界を、気楽に楽しんでいただきたい。
「くだものダンス」
道策や秀策が碁盤を繋げて打ったら・・・という話題は江戸時代からあるけれど、当然囲碁アートでもやりたいテーマである。
13路盤を二つ繋げた作品。
個展をした時は、これの左右反転バージョンを作って、くるくるさせて遊んだ。
みなさんもぜひお試しください笑
「消火器さん」
19路を二つつなげた、いわゆる大作。
2016年になるまで、まさか自分が絵を作るとは、夢にも思わなかった。
その更に2年ほど前には、囲碁の計算がなんか突然面白くなり没頭した。(プロ目指してる時には興味なかったのに・・笑)。
こちらも、まさか自分が計算なんて、と意外に思っている。
陣地を計算して絵を描くアート。今にして思えば、人生が自分の思い通りに行ったことなんて全然ない。
まるで天から突然降ってきたような、そんな代物に感じる。
いったん作り始めたら、いろんな絵柄、絵の手筋的なものがドバドバ湧いていて、その勢いを全てぶつけたのがこの作品。僕のいちばん好きな野良猫を描いた。
絶対に決まった場所にいるタイプの子で、一人暮らしの帰り道、消火器さんのおかげで全然さみしくなかった。感謝しかございません。
個展をするときには、これからも絶対持って行く作品。
・・・・長々と書いてみました。
思い入れのあるものばかりの、初めての本。
一度でも見ていただけたら嬉しいです!
ありがとうございました。
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